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『ウィザード・バリスターズ』は何アニメ?

 

 

大上段に構えるなら、魔術師の生存競争を綴る実録。大多数との比較において圧倒的な強者である魔術師が、社会階級における抑圧と対抗する物語と言い換えてもいいですね。サブタイトルに"弁魔士"を冠し、ファンタジーを借用した骨太の法廷アニメを演出するのかと思いきや、国家権力を否定するアプローチに泡を食ったというのが本音

 

物語において形式的な司法に要請されるものは、大抵が公正性(フェアネス)の実現に集約すると思います。多少の齟齬を切り捨てつつも、それが正義の性格と規定した上で肉薄することが前提にある。しかし法曹が主人公ながらこの作品はそうじゃないんですよね。裁判所にせよ警察にせよ、近代社会の統治機構は暴力性を帰納する為の舞台装置で、作劇としてそこに基本的な正義を求めていない。だから魔術師に対する差別と排斥ばかりがフィーチャーされ、公権力の実質的意義が問い質されることも、目標に掲げられることも全然ない。司法を切り口に視聴者の素朴な道徳観を逆撫でする「揺さぶり」は、これといってありません。魔術師の承認を拒む社会設計に由来した「自分達に圧政を敷き、隷属を強いる国家には帰属しない」という動機を魔術師は内面化していて、むしろ法の支配に否定的(そもそも魔禁法自体が魔術師に対する不当な管理社会を代表しているのでアタリマエですが)。暴力(魔術)は個人が所有する資質であって、国家による専有または裁定を許すところではなく、公的手続においてそれが適法か違法かは重視しない。これが魔術師(なんかアナキストっぽい)。そしてそのイデオロギーを体現しているのが主人公セシルですね。所持品検査やドレスコードを一蹴するなど、尽く干渉を嫌い、何を置いても魔術師(被告人)の利益を優先させる一本槍はご覧の通り。他にも突如ウドになってしまって自己評価の定まらない"元人間・現魔術師"のハチミツさん(CV.東地宏樹)が最新話でクローズアップされていたり。歪な社会の映すグラデーションを帯びたキャラが、銘々のドラマを織り成す感じで進行するんでしょうね。

 

よく突っ込まれている死刑or無罪の短絡裁判も、魔女裁判ってことでいいと思います。生存権を巡る魔術師の政治闘争があの場に仮託されている。何せ検察が人間で、弁護が魔術師です。公職から追放された魔術師が社会に抗弁する代理戦争の構図そのまんま。元より神聖な法廷劇はありゃしないってことですよ。画面の至る所で魔術師の信念に影が差している。

 

 

 

こうして振り返ると社会派()に聞こえますが、その実、骨格はアクション映画に近い。型通りのアクション・ムービーとして消費するのが誠実な態度かも知れませんが、そうであれば余録という体裁に留めておきます(震え

 

『出頭して下さい! 弁護します!

 

結論このワンコピーが作品のエッセンスを凝縮してると思います。寄る辺なきこのコンクリートジャングルで、力への信奉を叫び続けるマイノリティ。法規も正義も私の心には響かない。魔術を信じ続けるセシルの明日や如何に。いい話っぽく記事を締めたつもり